こんばんは。税理士の葵東子です。少し以前ですが、「租税法律主義」に関する注目すべき判決とニュースがありましたね。
一つは、5月23日の東京地裁(鶴岡稔彦裁判長)の、消費者金融「武富士」 の故武井保雄元会長の長男である武井俊樹氏に対する約1300億円の追徴課税処分を取り消す判決です。
それともう一つは、介護報酬を不正受給していたコムスンに出された行政指導です。 (コムスンについては、別の機会に・・)
これについては、下記サイトで解説させています。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20070611/126982/?P=1
武富士事件の概要を申し上げれば・・・、
外国に居住していれば、多額の贈与をしても日本の贈与税は課税されないしくみになっています。
それを利用して約1600億円の武富士の株式を長男に贈与したという事件です。
これに対し、課税庁は「租税回避行為あり」とし、追徴課税しました。
争点は、「外国に居住していたのか?」という点でした。これは、どうみても課税の要件は満たされて居らず、
課税庁の勝訴の確率は低いと思われました。
よく追徴課税したもの。。。と個人的には思いました。「租税法律主義」に反する追徴課税だったからです。
されど、武富士の長男の移住は租税回避目的であろうと想像され、 そこを裁判所がどう判断するのかが注目されておりました。
結局裁判所は、追徴課税を取消し、国を敗訴させました。
武富士の長男は追徴課税分を納税して裁判に臨んでいたため、納税した約1300億円を取り戻し、
更に115億円の還付加算金を取得しました。
顧問税理士や弁護士が、ここまで見越してアドバイスをしたならば、それはある意味お見事でした。 訴訟の結果、儲かりましたから。
この事件に関して、リーガルマインドのある税理士は、裁判所の判断を大絶賛し、そして安堵したはずです。
武富士の一連の行為を擁護するということではありません。
課税は課税庁の気分によってなされるべきではなく、「租税法律主義」によってなされるべきだからです。
裁判所は、よくぞその原理を守ってくれました〜。
裁判所の判決をひもといてみると、「裁判所は、いったいどっちを向いて判決を下しているんだ〜」 と思う判決も多いものです。
司法の独立と言われていますが、裁判官も公務員ですから、納得の出来ない国寄りの判決・ 裁判所の保身の判決が多々ありました。
今回は、国民的感情としては武富士の行為は擁護されるべきではなく、そういう状況の中、国を敗訴、 武富士を勝訴させ、「租税法律主義」を尊重してくれた大変意義のある判決なのです。
残念なのは、この事件に関し、「武富士が勝つなんて、裁判所はどういうところなんだ、 こんなことがまかり通るなどとは・・」と憤慨する税理士がいることです。
その発言が税理士を離れた個人的意見であるのであれば、それは多少理解出来ますが、しかし、 そういう前提のない意見であるならば「租税法律主義」を理解していない発言と思われ、大変残念なことです。
税理士ならば、近年国が課税を強化しようとしていることは十分理解出来ているはずです。その強化の仕方は、 あまりに強引ではないかと思うことしきりです。
であるならば、税理士の仕事は、法律に則った課税は受容するものの、法律に則らない課税は拒否し、 納税者を守る・・・それが税理士の仕事ではないでしょうか。
極端に納税者に偏るのでもなく、権力者である国に荷担するのでもなく、中立的な立場であるべきなのです。
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、 申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。
そしてもう一歩踏み込むならば、税理士は、税制について国家経営に資する税制の提言をすべきでしょう。
税理士は、複雑な税制に精通している税金のプロです。税制の欠陥も不条理な点も理解出来ているはずです。 健全な国家経営に資する税制の提言が出来るのは、税理士のはずなのです。
細かい実務的な改正の提言だけでなく、
税制の大枠を捉えての提言があってしかるべきではないかと思うのですが。。。。
それが、税理士の社会的存在意義ではないかと、最近思うようになりました。
そろそろ大綱が発表される時期です。
またひっそりと、納税者に有利な特例が消えていなければいいなと思うことしきりです。
近年は、理不尽な課税強化の改正が目につきます。
そんな改正ばかりが続くと、法律の穴をつくような武富士の行為も、
違法でない故に納税義務者の生きる道として否定されるべきものではないのかもしれないと、思うこともあるのです。
本日も、ここまでお付き合い下さいまして、ありがとうございます。
それでは、おやすみなさい。
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