2010年11月03日

「荷抜け」にみる日本の姿

こんばんは。葵東子です。久々の更新ですが、最近「荷抜け」(岡崎ひでたか著 新日本出版社)という本を読みました。本日は、その本についてお話ししたいと思います。お付き合い頂ければ幸いです。

 主人公は、大吉という10歳の男の子です。小作人の子供ですが、ある日父仙造が谷に落ちて死んでしまいます。物語の冒頭、大吉は父無し子になってしまいます。びっくりです。

 その後大吉は、冬にぼっか宿の住み込み奉公にでたりしながら、母と妹キヌと三人で暮らしますが、ある強風雨が襲来した日、田の水を見に行った母が足に大けがをし負い、それがもとで亡くなってしまいます。大吉は、 11歳にしてキヌと二人きりになってしまいます。超びっくりです。

 幼子二人で暮らせるはずもないのですが、大吉は、母が家を守れと言い残したからといって作男になることを拒み、ついには大吉は独立して1人でやってみることになりました。ここでまでで本の5分の1くらいです。このあとこの子はどうなるのかと思い、どうも心配で物語に引き込まれてしまいました。

 本のタイトルと物語の冒頭から、父は死んで居らず、荷抜けの指導者であろうことはなんとなく予想は出来ました。きっと荷抜けは成功するのでしょうとも思いました。

 しかし私が気になったのは、荷抜けより大吉の暮らしです。どうやって生きていくのであろうかと気になって仕方がありませんでした。

 なぜなら大吉の生活は、本当に貧しいものでした。米だけでなく、稗も塩も味噌もないのです。僅かな漬物の付け汁を貰いに、妹キヌが大吉の奉公先に来ることもありました。漬物の汁の塩分を貰うのが目的です。

 母が死にそうな時に、大吉が山でクズの根を見つけますが、これを女の子が横取りしようと石を投げてきます。食べ物を巡って本気のケンカをしています。まるで動物のようです。横取りすることが良いか悪いか、ということなど関係ないようです。あまりの生活苦に、大吉は牛泥棒をしようと企てたりもしました。

 大吉の母が死んだのも、互いの田を守ろうとして、カマを振り回しての争いがあり、それ故の怪我が原因でした。怪我をさせた憎い相手を、大吉は、ある日許します。その相手も生活苦で、母を山に捨ててしまうからです。俗に言う「姥捨て山」です。身売りや子供の間引きも、ごく普通の時代だったのです。まさに、生きるか死ぬかのぎりぎりで生きています。

 大吉はそういう生死のぎりぎりの様々な経験をしながら、だんだん大人になっていきます。貧しい農民と、搾取する地主との貧富の差に納得できなくなります。世直しが必要だと確信していきます。

 荷抜けは綿密に計画され、裏切りが出ないように荷抜けの正当性を説きつつ、仲間との信頼を深めていきます。そこに、親子の決裂や親子の信頼、同士との友情が生まれます。

 物語の主題は、世直し一揆に繋がるプロセスなのであろうと思いますが、私にとって印象的であったのは、農民の信じられないほどの貧しさでした。本を読み進むにつれて、昔こういう話を沢山読んだことを思い出しました。何時の間にか忘れてしまい、思い出すこともなかったのですが、日本もかつては悲しいほど貧しい者がいた時代があったのです。そういうことを改めて、思い出させてくれました。

 もう一つ。大吉は親の敵と思うものを許します。究極の貧しさを共有すると、親を傷つけ死に至らしめた憎い者も許せるのでしょうか。私は、そうなったとしても憎き相手を許せるかどうかは、どうも自信がありません。11歳の大吉に比し、私は心が狭いのかもしれません。

 日本人は、原爆を落としたアメリカを憎むどころか大好きになっています。外国人は、そういう日本人が理解出来ないと思うそうです。しかし、誰かを憎み続けていたとしても、憎しみからは憎しみしか生まれず、心安らかになれないことでしょう。日本には「水に流す」という考え方があります。こんな小さな国で憎みしみを引きずっていては、いつか憎しむべき相手の末裔は近くの友人や恋人と繋がってしまうからでしょうか。「水に流す」という考え方は、日本独特の考え方なのでしょうけれど、「隣人愛」にも似ているように思われ、何故外国人には理解されないのか不思議に思う部分もあります。やはり、私も日本人であり、日本人にしかなれないとしみじみ思います。 

 その他にも、人を組織することや信頼を得ていくことの重要性など、学ぶべき或いは考えるべき視点が多い本だと思います。

 主人公が10歳から成長していく様を描いていますから、お子様と一緒に読まれると良いかもしれません。第54回の読書感想文コンクールの課題図書(高等学校の部)でもあります。
 あるいは・・・、日本人らしさを取り戻したいときに、どうぞ。



 本日も、ここまでお付き合い頂き、ありがとうございます。それでは、また。






posted by 葵東子 at 17:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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